富岡製糸場と絹産業遺産群のお話

世界遺産ってなに?

世界遺産とは、地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から現在へと引き継がれてきたかけがえのない宝物です。 現在を生きる世界中の人びとが過去から引継ぎ、未来へと伝えていかなければならない人類共通の遺産です。 世界遺産は、1972年の第17回UNESCO総会で採択された世界遺産条約(正式には『世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約』:)の中で定義されています。 2016年12月現在、世界遺産は1052件(文化遺産814件、自然遺産203件、複合遺産35件)、条約締約国は191カ国です。

世界遺産登録の基準

世界遺産リストに登録されるためには、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている下記の登録基準のいずれか1つ以上に合致するとともに、真実性(オーセンティシティ)や完全性(インテグリティ)の条件を満たし、締約国の国内法によって、適切な保護管理体制がとられていることが必要です。
(1)人間の創造的才能を表す傑作である。
(2)建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値感の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
(3)現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
(4)歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
(5)あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。
(又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)
(6)顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい。 )
(7)最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
(8)生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
(9)陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。
(10)学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。
※世界遺産の登録基準は、2005年2月1日まで文化遺産と自然遺産についてそれぞれ定められていましたが、同年2月2日から上記のとおり文化遺産と自然遺産が統合された新しい登録基準に変更されました。 文化遺産、自然遺産、複合遺産の区分については、上記基準(1)~(6)で登録された物件は文化遺産、(7)~(10)で登録された物件は自然遺産、文化遺産と自然遺産の両方の基準で登録されたものは複合遺産とします。
文化遺産とは
顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文化的景観などを指します。
このようなことから、建造物の大きさや規模、あるいは、歴史の古さではないことがお判りいただけたでしょうか。
出典:公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟のHP

富岡製糸場と絹産業遺産群

富岡製糸場とともに登録された「絹産業遺産群」は3カ所。 1つは「田島弥平旧宅」(伊勢崎市)で、瓦屋根に換気システムを取り付けた近代養蚕農家の原型。 2つめの「高山社跡」(藤岡市)は、日本の近代養蚕の方法を開発した場所。そして3つめの「荒船風穴」(下仁田町)は、天然の冷気を利用して蚕種を貯蔵した日本最大規模の施設です。 これらの施設は、ほぼ完全な形で現存していることと、その歴史を伝える膨大な資料も完全な形で残っています。日本の世界遺産として産業遺産が登録されるのは、石見銀山遺跡とその文化的景観(2007年登録)以来、2例目です。 富岡製糸場と絹産業は、明治時代からの日本の近代化に欠かせない存在だったばかりか、世界の絹産業発展にも貢献した歴史が見えてきます。 富岡製糸場は世界中から注目のまと富岡製糸場はフランスの技術を導入し、日本初の本格的な製糸工場です。 品質の劣っていた日本の生糸の品質改善と、長い間不可能とされてきた生糸の大量生産を実現して、世界トップレベルの機械製糸工場にまでなりました。 富岡の生糸はアメリカなどに輸出され、近代化に必要な外貨が獲得されていたのです。 富岡の生糸ができる以前には、一部の特権階級のものであった絹でしたが、大量生産で生み出される富岡の生糸が安価でいて高い品質だったため、注目されるのは当然のこと。 やっぱりメイドインジャパンは、昔から品質本位ということですね。

世界文化遺産に登録された理由

富岡製糸場が日本の近代化だけでなく、世界の絹産業の技術革新にも貢献したこと。そして世界最大規模、抜群の生産能力を誇った工場がほぼ完全な形で残っていることが認められ、絹産業を構成するほかの3カ所とあわせて登録されました。 保存状態がよかったのは、富岡製糸場が操業停止後も「売らない、貸さない、壊さない」の3原則で守られたから。年間の維持費は約1億円、富岡市に移管するまで持ち主の 株式会社片倉工業は18億円をつぎ込んだ計算になります。
出典:世界遺産に行こうHP

第38回世界遺産委員会ドーハ会議の様子

女性議長のシーカ・アル・マサヤ氏の世界遺産委員会の会議が6月21日(土曜日)午前に始まり、 「富岡製糸場と絹産業遺産群」の審議は、現地時間の午前10時32分(日本時間 午後4時32分)頃にICOMOSのプレゼンが始まり午前10時56分(日本時間 午後4時56分)頃に登録決議がなされ ました。 その様子の一部を紹介します。

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